双子愛 〜悲シキ運命ノ糸〜
「彼ね、西中出身で野球部だったんだって」
「へぇー…」
「でね、高校入ってからも野球部らしいんだけど…」
「高校も?確か髪型、丸坊主じゃないよね?」
「坊主じゃなくても野球は出来るでしょ、問題は次だよっ!」
急に真剣そうな目で
あたしを見つめる絵里
「な…何?」
「なんと堀内君の家…お医者さんなんだってー!」
「…え?」
「すごいよねー、玉の輿だよ、玉の輿!咲希、セレブになれるかもよ?!」
「いや…そこまで話、進められても…」
「咲希、絶対逃しちゃダメだよ?内面がダメだったら仕方ないけど…玉の輿を逃がしちゃダメだよ?!」
絵里は昔のトラウマや施設での生活の影響があって、お金には人一倍執着心が強かった
絵里は美人だし、成績も良いから
あたしと違って、言い寄って来る男子は結構いるけど…
『あたしを一生、幸せにしてくれる?』
この一言にほとんどの男子は驚き
『幸せにする』と言った勇気ある男子には…
『具体的にどんな風に?どんな人生計画を立ててるの?仕事は?経済力は?』
いつもこんな感じで質問責めにして、結局男子が逃げる
せっかくの美人なのに、もったいないと、あたしはいつも思っていた。
「逃がすも何も、メール来てないし…」
「え、昨日来なかったの?」
「うん…きっとからかわれてたんだよ」
「…何か用事があったかもしれないよ?昨日何か用事あるって言ってたじゃん」
言われてみれば、確かに急いでいたように見えた
野球部って言ってたし…疲れて寝ちゃったとか?
「もう少し待ってみれば?もしイタズラだったりしたらあたしが言いに行くから!」
「言いに行くって…何を?」
「あいつに文句言うに決まってるでしょ!」
さっきまで『堀内君』と言っていたのに『あいつ』に変わってる
(もしかして、怒ってる…?)
笑顔で言う絵里に
どうか現実にならないようにとあたしは願った。