双子愛 〜悲シキ運命ノ糸〜
2つ並んだ、同じ携帯。
右の携帯は目立つ傷もなくキーホルダーがたくさん付いている
左の携帯は傷だらけでキーホルダーも何もなかった
あたしは携帯に
たくさんのキーホルダーを付けていた
「あたしのは…多分右かな…?」
2つの携帯を見つめていると右の携帯が鳴り出した
「わっ!!ど、どうしよ…」
とりあえず振動している方の携帯に出てみる
ディスプレイには【絵里】の文字
「も、もしもし?」
『あ、咲希?委員会の場所変更になったよ、2階の空き教室だからね、はやく来てよー』
「あ…あのね、荷物運んでたら自分の帯踏んで転んで、でもそれはあたしのじゃなくて…」
『…何言ってんの?転んで頭打った?』
「打ったのは顔…」
『とにかく早く来てよー、じゃあねー』
それだけ言って絵里は一方的に電話を切った。
「……」
2つ並んだ、同じ携帯。
右の携帯は目立つ傷もなくキーホルダーがたくさん付いている
左の携帯は傷だらけでキーホルダーも何もなかった
「どうしよう…」
あたしは1人
同じ携帯を2つ握り締め
廊下に段ボール箱と並んで座っていた。
(きっとこっちがあたしの本物の携帯…絵里から電話来たし)
右手のキーホルダーがついた携帯を見て、確信し
(勝手に開けちゃダメだよね、プライバシーとかあるし…)
左手の傷だらけの携帯を見ながらあたしは悩んだ
ここに携帯を置いて
さっさと委員会に行くのは、なんだか薄情な気がした。
(職員室に届けるのが1番…)
2つの携帯をポケットに入れ、
床に散乱してた写真を箱に詰め込み、あたしは絵里が教えてくれた教室へ行こうとした
そんな時
再び携帯が鳴った。
(急がなくちゃいけないのにー…今度はどっち?!)
2つの携帯を確認すると
鳴ったのはあたしの携帯ではなく
拾った携帯だった。
ディスプレイには【良太】の文字