音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
Act.3
バカッまお!
「おはよ」
「おはよう、まお」
真っ青な空に、優しい太陽に包まれて迎えた今日は――― 始業式。
あたしは2年生になった。
“ドキドキ”や“ワクワク”した新鮮な気持ちで迎え、今年1年の事に華を咲かせながらの登校のはずなのに…… あたしの2年生の最初はなぜか、菜々のお説教から始まった。
「どーして、早く耳鼻科に行かなかったの!」
「だってぇー」
「だってもこってもないっ」
“こって”なんて言ってないもん。
そうやって思っていると、あたしの言葉を見透かしたようにジロリと睨まれる。
朝のホームでなぜ菜々が大声で怒っているかというと……。
「耳の異変に気付いたらなら早く行かなきゃいけないでしょ! 本当に耳が聞こえなくなったらどうするつもりだったの」
「その時は、その時だよ」
「考えが甘いっ!」
数日前に菜々に“難聴”だって、メールを送信した。
本当は直接会って言った方がよかったのかもしれないけど…… そんな勇気が出なくてメールにした。
メールだと顔が見えないからちょうどよかったんだけど……。
朝から思い切り、怒られている。