音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
認めたくない現実
始業式から数日が経った。
新しいクラスに徐々に慣れ始めてきた今日。
ママの作ってくれたお弁当を食べ終え、優ちゃんとお喋り…… と、いきたいところではあるが。
「まお、大丈夫?」
「大丈夫……」
正直…… 毎日が辛い。
春休みは、少しダルくても直ぐにベットで休んだりできる距離にいたせいで、学校が始まると中々そのような生活が出来なくなってしまった。
“学校を休む―――”
そういう選択肢が無い訳では無いが、それはイヤだ。
1度休んだら休み癖がついてしまいそうだ。
「顔色悪いよ?」
「大丈夫だから、ね」
「“前田くん”にバレるよ?」
そう、休んだりしたらいっくんにバレてしまう。
いっくんだけには今のあたしの状態を知られたくない。
「5限目は保健室に行く? 少しやすんだ方がいいって」
優ちゃんが心配してくれることは嬉しいよ。
でもね、ここで休んではいけないような気がするの。