音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
「はぁー」
ドカッと、ママのいる待合室のイスに座った。
「どうだった?」
あたしのこの顔をみたら分かるでしょ?
それなのに、わざわざ聞く?
「下がっていた」
「……どれくらい?」
「最初にここへ来たくらい」
春休み中には半分以上も聴力が回復して“左右の聴力が重なるまであと少し!” ってとこまで回復していたのに…… 今日測ってみたら。
「初期に戻っているだなんて、最悪」
あたしのあの数週間の努力はムダ?
意味ないの?
あたし、頑張ったじゃん。
なのに、どうして……。
悔しくなって、キュッと唇を噛み締める。
「一応、入院も考えておけだって」
「入院っ!」
入院なんて…… イヤだな。
ママだってあたしが入院したら嫌でしょ?
「入院したら聴力が戻るの?」
「知らない。 でも、入院してちゃんと治療した方がいいかもだって」