音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
あの後は、アイスをおごらされたな……。
「おはようございます」
校門前にはコートを着て立っている先生がいる。 その先生に挨拶をする。
ブルブルっと体を震わせ、コートに手を入れて寒がっている。
朝からかわいそうに……。 なんて思いながら横を通り過ぎる。
「今夜、よろしく」
「ママに言っておく」
いっくんと陽太くんは1組で、あたしと優ちゃんは4組。 だから、1組の前で2人とは別れる。
クラスが違うから普段いっくんに会う事がない。
会うとしたら……。 忘れ物をした時くらいかな?
教室はストーブで温かくなっているけど体は冷たい。 スカートから見えている足はリンゴのように真っ赤に染まっている。
ひざ掛けをスカートの上から巻き、スカートとひざ掛けの間にホッカイロを入れる。
ホッカイロが冷たい足を少しずつ温めてくれる。
ゆっくり足が温まっていく―――。
数十分して、担任が入ってきてSHRが始まった。