音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
本当はもっともっと……書きたいことがあった。

紙切れ1枚じゃ足りないくらい3人には書きたい。


でも……
そんな事は許されなかった。



「もうちょっと頑張ってよ」


鉛筆が『限界だ!』って言っている。


しょうがないよね。
教卓から見つけたやつだし……



「よし、帰るか」


1週間は休むからジャージはもちろんお持ち帰り。


ジャージを入れている袋に教科書類を入れて、教室を出ようとしたけど……


どうしても、あそこに目がいってしまう。



「…………いっくん」


全く口をきかなくなって何日も経つって言うのに、あたしは『ゴメンね』の一言も言わずに入院。


いっくんを怒らしているのはあたしなのにね……



ドアに向かっていた足を別の方へ向けた。


「………ゴメンね、いっくん」


いっくんが普段使っている机にそっと触れてみた。








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