音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
バス停で優ちゃんと別れ、あたしは電車に揺られ家に帰った。
「ママー、今日いっくん遅くなるってー」
「はいよー」
帰り際、いっくんに言われた事を思いだし忘れない内にママに報告する。
「まおが帰ってくるとき雪降っていた?」
「降ってなかったよ」
あたしが帰ってくる頃はまだ雪は降っておらず、曇り空。
最近はずっとこんな天気が続いている。 嫌になる……。
少し……? 軽いカバンを持って自分の部屋に戻る前に理央ちゃんの部屋に立ち寄る。
「理央ちゃん、ただいまー」
「おかえり」
中学生は羨ましい。 5時00分前にはもう家にいるんだから。
どうしてあんなに遠い学校選んじゃったのかな?
地元には高校が1つあるんだからそこへ進学すればよかったかも……。 そうしたらもう少し早く帰って来れたのに。
あっ、でも……。 そうしたら、優ちゃん達には会えなかったのか。
それは寂しいから、やっぱり今の学校がいい。
「今日って樹くん来るの?」
「なんかバスケ部の助っ人頼まれたからってちょっと遅れて来るみたいだよ?」