音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
今、凄く後悔している。


やっぱりいっくんには昨日、話せばよかった。


いくらあたしと目も合わせてくれないいっくんでも、あたしが家に押し掛ければ話を聞いてくれたよね?



「そうだ。
誰か来た時の為に“お菓子”買っておいた方がいいよね?」


……… ママ。
何を言っているの?


お菓子ですって?
お・菓・子。


「そんなの、要るわけないじゃん。
看護師さんと家族以外は誰も来ないから」


昨日の時点でどこの病院に入院するか決まっていたけど、手紙にその病院名までは書かなかった。


だから、家族以外はあたしがどこの病院に入院しているかって知らないはず。


「ママ、先生に電話でここの病院の名前話しちゃった」


うぅっ……
先生に話したのか。


でも、先生に話したからって何の問題も無い。


先生がお見舞い来るだなんて……
想像つかない。







< 191 / 557 >

この作品をシェア

pagetop