音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
これが木下家の日常。
「まおは相変わらずボケッとしているな」
「それだからまおちゃんは毎朝忙しいんだよ」
あたしの家族はパパとママと妹の4人。
妹の理央(リオ)ちゃんは中学1年生なのに…… 妙に大人っぽくて、あたしよりもしっかりしている。
どっちがお姉ちゃんかわからない。
「まおっ! 7時5分過ぎているから早くしなさいっ」
再び、ママの強い声が飛んできた。
ヤバッ! のんびりしすぎた。
これは本気で急がないと間に合わなくなる。
急いでご飯と一緒に出されている“ミルクティー”を一気に飲みキッチンへ駆け込んだ。
「あっ、忘れものっっ」
もう1度リビングに戻る。
左手に小さな"カプセル薬”を持ち、右手でパジャマのポケットに"吸入器”を入れてキッチンへ戻る。
ミルクティーを飲んだカップをササッと温水で洗いそのカップに水を貯める。
口を水でイッパイにして、さっきの小さな"カプセル薬”を一気に飲み込む。