音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
暗い夜道
部屋でゴロゴロしながらマンガを読んでいたら…… 枕元に置いてある携帯が鳴った。
「もしもし?」
「まお、ヒマだよね?」
ちょっと! どうしてあたしを“ヒマ”と決めつけるの。
もしかしたら勉強しているかもしれないじゃん。
「何、もうご飯?」
「違うよ。 ママの用事を聞いてほしいの」
「用事?」
なんだろう?
「雪が降ってきたから駅まで樹くんを迎えに行ってきてほしいの。 ほら…… 今朝は雪降っていなかったから傘なんて持っていないと思うから」
そうか、そう言うことか。
今朝はママが言うように、雪は降っていなかった。 あたしも“雪は降らないだろう”と思って、傘は持っていか無かった。
どーせ、いっくんもあたしと同じ考えで自転車に乗っていただろう。
「はーい、迎えに行ってくるよ」
今はチラチラ雪が舞い始めてきた。 なので、これから量が増えることは想像がつく。
それに"イヤ"と言っても、どうせ頼まれることは分かっているから、ここは素直に従う。
雪が降ってきたからって傘なんて、無意味なような気がするけど…… まあいっか。
コートとマフラーを着けて部屋を出たら……。
「どこか行くの?」
理央ちゃんに会った。