音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
――― チーン。


「ほら、降りろ」


「はーい」


降りる時も、もちろんいっくんがエレベーターに手を添えてくれた。


そこまでしなくても、エレベーターに挟まれたりはしないんだけどね。



「あの二人はジュース買うだけで何分掛かってんだよ」


「沢山あるから悩んでいるんだよ」


この病院には売店と自動販売機の両方があるから、二人ともどっちがいいか迷っているんだ。


いつもは売店を使う事が多いけど、自動販売機にも色々なジュースがあるからいつもどっちで買おうか迷っちゃう。



「迷うにしても遅すぎる。
あいつらは何してんだか」



エレベーターを降りてからのいっくんはずっとこんな感じ。


ぐちぐち文句の言いっぱなし。


でも、二人が帰ってくるのが遅かったからあたしはまたいっくんと肩を並べて歩けるから大満足。







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