音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
本当にいっくんの言った通りだ。


ブルッと体が震えた。


エレベーターを降りて直ぐはそんなに寒くなかったけど、出入口に近づくにつれてどんどん寒くなる。


いっくんの言った通り、カーディガンを着てきて良かった。


肩からずり落ちそうなカーディガンをそっと直した。



「ん、まお。
やっぱり寒いか?」


「う、ううん。
大丈夫だよ」


少し肌寒さは感じるけど耐えられないって訳じゃないないから大丈夫。


あたしは寒さを防ぐ為に、もう一度しっかりカーディガンを直した。



「ったく、あいつら“こんな所”で油売っていやがった」


優ちゃんと陽太くん……発見。


自動販売機が置いてある休憩室で座って楽しそうに話している。



何、話しているのかな?


あたしも加わってこよ。


自動販売機まで残り数メートル。


「いっくん、急ごっ」


「危ないから走るなよ」


「大丈夫だって!
遅いから置いていくよー」








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