音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
もう、いっくんは遅いから置いていこう。


タタタッと真っ白い廊下を駆け出した。



「優ちゃん、陽太くん!」


「あっ、まおじゃん」


「“まおじゃん”じゃないよ。
二人とも遅いんだもん」


「ごめん、ごめんって。
ほら、まおのジュースは買っていないから選んでおいで」


優ちゃんたちはあたし達に飲み物を買いに行ってくれていたんじゃないの?

これじゃあ、何のために二人が出て行ったのかわからないじゃんッ!!


目の前には3台の自動販売機。

ふふーん。
何がいいかな……


「まお、金」


「ありがと」


いっくんも追い付いたみたいだ。


あたしより足が長いから直ぐに追い付いて当たり前か。


「いちご・オレ!」


今日は『いちご・オレ』にしよう。


『ばなな・オレ』も好きだけど……
なんだかいちごを飲みたい気分。



「しっかし、病院の自販機は高いな……」


「あー、それあたしも思った!」






< 216 / 557 >

この作品をシェア

pagetop