音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
一向に降り止まない雪は“明日は積もるんじゃないか”と思わせるような勢いで降っている。
「明日ってどこの学校と練習試合なの?」
「南校だったかな?」
「じゃあ頑張らなきゃね」
あたしたち北校は南校とよく練習試合を組んだりしている。
練習試合の結果はどの部活も五分五分。
「体育館って北校?」
「北校だけど。
…… まお、見に来るなよ」
「行かないよ。 だってあたし、補習だもん」
「そっか、そうだったな。 練習試合が終わる頃は補習も終わっているか」
「そうだよ」
数学の教科書は学校に置いてきちゃったけど…… なんとかなるよね?
いまだに降り止むことの無い雪に包まれながら木下家を目指し、ゆっくり帰った。