音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
夕ご飯
「ただいまー」
「おじゃまします」
玄関を開ければ、夕ご飯のいい匂いが広がりあたしの空腹度をアップさせる。
「ママー、夕ご飯はー?」
「樹くん、おかえり。 外は寒かったでしょ? 今、温かいご飯出すね。
まおは手伝って」
「はーい」
コートを脱ぎ、温かいご飯を求めて、あたしはキッチンへ駆け込んだ。
鍋のフタをパカッと開ければ……。
「カレーだ!」
「ご飯盛るだけだから持っていってね」
ママがお皿を3枚持ち、ご飯を盛っていた。
あたしはそのご飯の上に温かいカレーをかける。
ゆらゆらと湯気が上がりカレー独特の匂いが鼻を刺激し、お腹まで刺激した。
「まおちゃん、持っていくよ」
「熱いから気を付けてね」
いっくんが家に来る時はいっくんと理央ちゃんとあたしの3人で食べる。
理央ちゃんに「先に食べていてもいいんだよ?」と言っても「待っている」の一点張り。