音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
あたし、3つも食べられないよ。


「サラダとドリンクでございます」


目の前にサラダとドリンクが置かれた。


「言っただろ。
俺は朝から何も食ってないって。
だから俺が2つ食うの。

少しだけまおにハンバーグ分けてやる」


朝から何も食べていないって……
映画館でホットドッグ一つとフライドポテトを少し食べたじゃん。


……… 足りなかったの?



「俺があれだけで足りるわけ無いだろ。

つーか、まお。
サラダ“残さず”食えよ」


「わ、分かっているよ」


くっそー、バレていたか。
さっきからフォークでお皿の端に集めていたのに。


さっき運ばれてきたサラダにはあたしの天敵が潜んでいた。


ニヤニヤって笑うその憎たらしい笑み。


絶対あたしを見てからかっているんだ。


いっくんは知っているんだもんね、あたしが『こいつ』をとことん嫌っていることを。







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