音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
「どうしてピーマンが嫌いか俺にはサッパリ」


「苦い!」


「野菜なんだから当たり前」


野菜だって苦くない野菜はあるよ。
キャベツでしょ、レタスにニンジン、大根……
たくさんあるんだから。



「お待たせしました。
“カルボナーラ”と“ハンバーグ”と“タラコスパゲティ”になります」


きたっ。
二人なのに、メイン料理が3つ……


このテーブルに置けるかな?


どうせ、いっくんの事だ。
置けなくたって無理矢理置いてしまうだろう。


「ごゆっくりどうぞ」


……… 置けちゃったよ。


あたしは熱々のカルボナーラをクルクル回して口に運ぶ。


うん、麺の固さは丁度いい。
固すぎず、柔らかすぎずってね。



「なあ、まお。
聞いていいか?」


「何をー」


あたしはいっくんに一切、目を向けずに視線はずっとカルボナーラ。


そのせいで、いっくんが箸を止めているのにも気付かず、フォークをクルクル……




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