音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
春の冷たい風がヒュッと体を撫でる。
風邪を引かないためにもさっさっと家の中へ。



「ただいまー」


「おかえりっ!」


理央ちゃんがタイミング良く迎えてくれた。


ちょうどよかった。
理央ちゃんにはケーキのお土産とシュークリームがある。


シュークリームはいっくんから。
いっくんは理央ちゃんの分だけではなくて、パパとママの分まで買ってくれた。


「ケーキとシュークリームだ!
まおちゃんありがとう」


「どういたしまして」


よかった。
いっくんがあの時『ケーキ』って言ってくれなかったらあたしは『ドーナッツ』にしていたよ。


理央ちゃんがケーキでこんなに喜んでくれるならケーキにして正解。



「……… 何やっているの?」


「ちょ、静かに。
今“シュークリーム”撮っているんだから」


冬場はこたつだったテーブルにシュークリームを置き、携帯を向けていた。







< 374 / 557 >

この作品をシェア

pagetop