音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
シュークリームを撮るねぇ。


こんな普通のシュークリームのどこがいいのかあたしにはサッパリ分からない。
写真に納めるほど?


――― パシャッ。


「ふぅ~、出来た」


「ご苦労様」


「待受にしようっと」



シュークリームの待ち受けって……
お腹空きそうだよ。


じゃなくてもお腹はすぐに減るのに。



「樹くんとどこに行ったの?」


「映画見てー、デパートでお昼食べたの」


映画館に着いた時はビックリしたな。


まさかいっくんがあたしが見たいって言った映画を覚えているなんて信じられなかった。


興味無いものだと思ったし。



「可愛くオシャレまでして。
映画とお昼ねー」


「……… 理央ちゃんどうした?」


「べっつにー」


ん、理央ちゃんがあたしと目を合わせようしない。
あたし、何かした?


もしかして、一緒に連れていかなかったから拗ねているとか?


それだったら。
今度どこかに連れて行ってあげよう。
うん、そうしよう。







< 375 / 557 >

この作品をシェア

pagetop