音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
Act.1
風邪
「具合が悪いのにどーして歩いて帰ってくるの! だから、熱なんて出すんでしょ?」
「…… はい」
雪が舞い散る中、駅まで理央ちゃんと一緒に歩いて帰った。 結局あたしは次の日、熱を出した。
「熱冷ましちゃんと飲んで寝てなさい」
「はーい」
なんとか昨日は無事に家に着いたけど、帰ってきてすぐあたしはベットに潜り込んだ。
案の定、せっかくの日曜日だというのに……。
「37,8℃か…」
脇に挟んだ体温計が鳴ったので、取り出し確認する。
37,8℃まで熱が上がってしまった。
枕元でママの怒りを通り越して呆れ返った話をボーっとする頭でなんとなく、整理する。
“少しくらいだったらいいかな?”って、あの時は思った。
まだ昨日はそれほど“具合悪い”って程じゃ無かったし……。
あぁ、こんな事考えていたら頭が痛くなってきた。
「はい、熱冷まし飲んで」
コップに“これでもかっ!!”というくらい並々と入っている水を口に含み、熱冷ましを一気に飲みこんだ。
「水は全部飲みなさい」
げー、最悪。 あたし、薬飲む時の水好きじゃないのに……。
でも、ご飯食べないんだからしょうがないか。
ママがコップ“イッパイ”に入れてきた水をしょうがなく全部飲み、あたしはゆっくり眠りに落ちる。