音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
何が『やっと言ったな』なの?


思わず、顔をあげてしまった。



「いっくん?」


バカだの色々言われていたからあたしは自然と俯いてしまって、いっくんの表情はさっぱり。


でも。
今、見上げたいっくんは……
なんだか、いつものように笑っている。


「ったく、どーしてまおは自分の気持ちを隠すかなー。
何かあったら電話しろって、番号だって教えてあるだろ?」


それは携帯の事を言っているの?
番号だけじゃなくて、メアドも知っているけど…… それがどうしたの?


いっくんの今の話し方とさっきまでの話し方とのギャップが大きくて……
どうしていいか、よく分からない。



「まお」


「………」


やっぱり変だ!
『まおッ!』って呼んでいたのが『まお』だよ?


変貌しすきだ!


あたしたちの距離はちょっとあるけど……
何、ゆっくりあたしの方に近づいてきているの?
もう、あたしはパニック。


いっくんのバカー!







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