音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
ザワザワーと、強く風が吹いた。


『――― 樹くんがスキ』


それって…… どう言うことなの?


スキって…… あのスキ?
likeじゃなくて…… loveの方?



「それで…… いっくんはなんて答えたの?」


「“ありがとう”って言って、“でも、理央ちゃんの気持ちは受け取れない”…… そう言った」


これで、全部繋がった。


理央ちゃんはいっくんに振られたんだ……


理央ちゃんがいっくんをスキだったなんて…… 知らなかった。


あたしから見たら、理央ちゃんはお兄ちゃんのようにいっくんを見ていたから。


まさか、恋愛対象になるだなんて…… 想定外。



「分かっただろ、これでどうして理央ちゃんが泣いたか」


「うん、分かった…… ごめんね、なんかありがとう」


理央ちゃんにしてみたら、初めての告白だったんじゃないかな?


スゴい、勇気だったんだよな……


いっくんもそれが分かっていたから、こうやって理央ちゃんを心配しているの?







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