音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
たった1日休んだだけなのに、長期休み明けの気分で学校に登校する。
「まおちゃん、大丈夫?」
「大丈夫だよ。 ありがとう」
クラスの人に挨拶をして、席に着く。
引き出しの中には数枚のプリントが入っていた。
「――― したさん、木下さんッッ」
「何?」
「これ休んでいた時のプリントだからっ」
やけに強く、隣の席の男子からプリントを渡された。
「…… ありがとう?」
渡し終えた彼は、友達の元に戻っていく。
さっきの態度に不思議に思いながらも、あたしは受け取ったプリントを見る。 …… 正直、さっきの彼の態度が気になり、頭に入ってこない。
急に話しかけてきたと思ったら、向こうが一方的に怒っていた。
あたしさっき、何か気に障るような事したのかな?
…… 全く、思いつかない。
機嫌悪いならわざわざ話しかけて、来なくていいのに。
授業のプリントなら、その授業の前に渡してくれてもよかった。
「…… どうしたの?」
あたしが難しい顔をしていたせいか、優ちゃんがあたしの顔をのぞきながら近づいてきた。
「なんだか、さっきの彼…… 怒っているみたい」
「そりゃ、そうだよ。 さっきのは、どうみたって、まおが悪いんだから。 …… あたしずっと見ていたけど、まおのとこ呼んでいたよ」
ずっと呼んでいた?
…… あたしは1回で反応したよ?
「まだ具合悪いんじゃない?」
「大丈夫…」