音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
「まお、ごめんな。
でも、これで分かったろ? “キモチ”が固まっていないって」


「固まっているもん!」



つい、強く言い返してしまう。

でも、いっくんにしたらそんな事は関係無いみたいだ。


「ウソつきだなー、まおは。
でも、ごめんな? なんか色々考えさせたりしたな」


そりゃ…… 考えたよ。
あんな事を急にされたんだもん。


それでも、本当に嫌じゃ無かったんだよ?


だって…… いっくんが好きなんだもん。


どうやったら、このキモチが伝わる?
伝えたいよ、いっくんに……


それで、いっくんのキモチも聞きたい。



「いっくん……」


「俺、急いでいないから。 キスなんて今のまおに出来なくていいから。
拒否してくれなかったら…… 俺が知っているまおじゃない」


優しく髪を撫で、頭を包み込んでくれる。


いっくんに頭を撫でてもらうのって…… 嫌いじゃないんだ。






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