音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
…… やっぱり淹れてあげるんじゃなかった。
いっくんが喜ぶと思って、淹れたのに。
「来年のクラスどこにした?」
いっくんの向かいに座り、ミルクティーを一口飲んだ。
「んー、一応理数クラスだけど。 いっくんは?」
「俺も理数系クラス」
あたしの学校は2年生に進級する時にクラス替えがある。
理数クラス、文系クラスの2クラスずつに別れる。
「陽太くんは?」
「陽太も一緒」
優ちゃんも理数クラスを選択していたから4人で同じクラスだったらいいな。
そうしたら、毎日が絶対に楽しそう。
「いっ―――」
いっくんに話しかけようとしたら――― キーン!!
右耳から聞こえてきた、高い音の耳鳴り。
…… また?
「まお?」
途中で話を辞めたあたしを不思議に思い、いっくんが声をかける。
「何でもない」
“いっくんさー”と、続けるはずだった。
でも。 ――― キーン、キーン!!
最近、時間や場所なんて関係なく、よく耳鳴りがする。
直ぐに鳴り止めばいいが、困ったことに、何時間も鳴り続ける。