音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
――― キーンコーン カーンコーン。


特別教室に余礼のチャイムが響き渡った。



「授業、始まるな」


「そうだね。 教室、戻ろうか」


イスを戻して、あたしは出口に向かった。


「まおっ」


「ん、何?」


いっくんは教室に戻らないの? 急がないと、授業遅れるよ?

あたしも急がないと遅れちゃう。



「これからも、今まで通りでな」


「う、うん」


そっか、あたしたちは付き合っている訳じゃないもんね。
今まで通りの『幼なじみ』が続くんだ。


「いっくんも、これからもよろしくね」


「おう、任しとけ」




あたしたちに『遠慮』なんてステキな言葉は存在しない。


「まおは“絶対”俺を好きになるよ」


ほら、いっくんはさっきまでの空気をぶち壊してくる。


でも、それがいっくん。





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