音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
痛いよ、痛いっ!
キーン、キーン、キーン……。
相変わらず、耳鳴りは続いている。
「静かにして。 近所迷惑でしょ?」
「痛いんだもん」
これはガマンできない。 半端ないくらい痛い。
「高校生になってまで転ぶなんて、小学生みたい」
ちょっと、ちょっと…… 理央ちゃん。 理央ちゃんまで、そんな事言うの?
なんだかいっくんに、似てきた。
「――― はい、終了」
「ありがと」
ヒザはズキズキ痛み、耳鳴り。 ――― そして、めまい。
今のあたしの体は最悪。
理央ちゃんと一緒にママが帰ってくるまで2人で留守番をする。 会話は、理央ちゃんの今日の出来事やあたしの学校の話がほとんど。
そして、ママが帰ってきてから3人で夕ご飯の支度をした。
結局、耳鳴りが止んだのは夕ご飯を食べ終わった頃だった。
3時間……。 こんなにも長時間、鳴り続けていた。