音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
Act.2
検査室
思ったより雰囲気いいじゃん。
優しいメロディーが流れる個人病院。
外見はちょっと広い家のようにしか見えなくて、簡単に足が進んだ。
「よし、できた」
問診表を書き終えた。
10項目近くあったけど…… なぜか、半分くらい当てはまってしまった。
まぁ、そんな事もあるよね?
受付の看護師さんに問診表を出して、名前が呼ばれるのを待つだけ。
「早く終わるかな?」
「まおが何ともなかったら終わるんじゃない?」
「パンとアイス買って帰ろうね」
あたしなんか病気の心配より“パン”と“アイス”の心配。
食べ物にはやっぱり弱い……。
「木下さーん、木下さーん、中へどうぞ」
………きたっ。
もう、逃げない。
名前を呼んでくれた看護師さんに誘導され先生の前へ座った。