音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
大切な友達
「「おはようございます」」
自転車置き場のおじさんに挨拶をして、自転車を停める。
現在 7時35分。
ギリギリだけど…… なんとか間に合う。 3分もあればホームまでたどり着ける。
「まお、急げっ」
あたしの方が駅に近い場所に停めているはずなのに……。 いつもいっくんの方が早く駅に近づいていく。
足の長さかな? …… ってこんなこと考えている場合じゃない!
早くホーム行かなきゃ。
いっくんが前を走っていることが、少しカンに障る。 それでも、その背中を追いかける。
――― 小さい頃はあたしが前を走っていたのに……。
「おはようございます」
駅員さんに挨拶して、階段をかけあがり2番ホームに走り込む。
「おはよ、まお」
「あ、菜々! おはよ」
よかったー、ギリギリだけど間に合った。
中学の時一緒のクラスで、仲良くしていた友達、瀬川 菜々(セガワ・ナナ)がちょっと呆れた様な顔で言った。
「もう少し…… 早起き、頑張ろうね」
「はい……」