音のない世界 ~もう戻らないこの瞬間~
多少残っている右耳の聴力。
もしこの右耳が聞こえなくなったらどうなるの?
優ちゃんや菜々はこれからも友達でいてくれる?
クラスでいじめられないかな?
回りからどう思われる?
“障がい者―――” そう思われちゃうのかな?
――― そんなの、イヤだ。
お風呂道具を取りに部屋へ戻って、ドアに背中を預けた。
「どうしよう……」
先の見えない不安にどうしようもなく襲われて、明日が見えない。
こんな事になるんだったら早く医者へ行っておけばよかった……。
今更こんなこと思ったって遅い事くらい分かっている。
…… 分かってい、分かっているけど。
――― 辛いんだ。
現実は“――― 難聴”
これは変わらない事実だけど、いまだに受け入れる事が出来ないのも事実。
あたしのココロは複雑だ。