kiss me please─甘い口付けを─
kiss
たった今。
あたしは彼氏別れを告げられた。
あまりにも唐突すぎて、言葉が出ない。
顔に容赦なく吹き付けてくる風の、ヒューという音だけが響いていた。
「柚季…ごめんな」
彼はそう言ってあたしから離れていった。
こんな別れってありだろうか。
1年と9ヶ月一緒に過ごした彼女に、気持ちが冷めたからなんて一言で去っていく彼。
まるであたしの気持ちなんて無視じゃないか。
ねぇ、2週間前に交わした言葉は嘘だった?
好きだよ、なんて気持ちが冷めても君は言えるの?
ねぇ、この指に光るシルバーのリングはなんの為にくれたの?
まだ、2週間しかつけてないんだよ。
「隼人…」
好きよ、好き。