kiss me please─甘い口付けを─
「何この部屋…」
あたしの部屋に入るなり、電気すらついてない部屋にひとりベッドの脇に座ってうずくまっているあたしをみて呆然とする亜紀。
「……ごめん」
「辛気くさいにも程があるわ」
はあ、とため息をついて、電気のスイッチをパチンとオンにする。
電気が明るく部屋を照らすと、自然と口から言葉がこぼれてきた。
「…フラれちゃった」
「……もういっかい」
「あたしフラれちゃったよ亜紀ぃ…ヒック」
今までこらえてきた涙が、亜紀の顔を一瞬見たら封を切ったように流れ出す。
「なんで!?
だってあんた指輪もらったってこの前喜んでたじゃない」
喜んでたよ。喜んでた。
「ッ…」
「いつもうざいくらい仲良かったじゃない」
そんなに仲良かったかな?
…まあ、今となっては意味のないことだけど。
「冷めたって……ヒック」
「え?」
「気持ちが…冷めたからってっ……うー…」
顔を上げて亜紀に抱き着く。
亜紀の服からは、なんとなく、本当になんとなくだけど、隼人の香りがした。
「ちょ、柚季…」
亜紀は突然のことに相当驚いたようで、焦ったような口調であたしを宥める。
「あたし…っ
なんか…ヒック、悪いことしたかなぁ?」
『冷めた』なんて一言じゃ、わからないよ…