kiss me please─甘い口付けを─
亜紀はあたしを宥めるように背中を叩きながら、口を開いた。
「いつ言われたの?」
「昨日の、…デートの最初」
「言われたのはそれだけなの?」
亜紀は手を休めることなく続ける。
そのおかげで、涙は少し収まってきた。
「…、あとはごめんだけ」
隼人は、昨日確か5回もごめんと言った。
他は、名前を呼んだのと『気持ちが冷めたんだ』だけ。
これだけで納得しろなんて酷すぎる。
「…納得出来ない」
亜紀は手を止めて立ち上がった。
「え?」
「納得できないの!」
亜紀はポケットから携帯を出して誰かに電話をかける。相手はきっと、彼氏兼隼人の親友である徹也くんだろうけど。
「あ、徹也?今から柚季の家に来て。
10分で!一緒にいるなら隼人も連れてこい!」
亜紀はそう言うと電話を切った。
強引なところは誰の前でも全然変わらない。
でも徹也くんは来るのかな?
きっと、隼人から別れたこと聞いてる。
正直、詳しいことを聞くのも怖い…