kiss me please─甘い口付けを─
何も言わない隼人に徹也くんが問いかける。


「大体さ、お前は話そうと思ったからここに来たんだろ?
なんで話したくないならあのとき無理矢理でも俺を振り払わなかったんだよ」



「…顔見た瞬間、やっぱり無理だと思った」


「なんでそんなに隠したがるんだよ」


「俺といたって幸せになれるか?
ヒステリックなバツイチの母親持って、おまけにこれから遠恋。
そんなやつと一緒にいて幸せか?
せっかく高校生なのに今からこんなじゃ辛いだけだろ

─って俺馬鹿だ…」


隼人は一気に話したあと、ひとり頭を抱えた。


今、やっと話が繋がった。
あたしを嫌いになった訳じゃなくてよかったと思うのと同時に自己嫌悪が襲う。


隼人の両親が仲がよくないということは少しだけ聞いていたけど、

離婚するまでとはしらなかつたし、お母さんのことだって何も知らない。


彼女だったのに何も知らない。


「遠恋って…あんたどこ行くのよ」


「…北海道」

ほっかいどう?


「なんでまたそんな遠く」

「よくしてもらってるおばさんちに世話になるから」

ふーん、そう言って亜紀は何かを考えるそぶりを見せる。


それから、亜紀は立ち上がって

「さて、あたしたちは帰るわ。
あとは隼人が柚季のこと慰めてね」

と言った。



「だな。
じゃーな隼人、柚季ちゃん」


ふたりはそう言い残して、あたしの部屋をあとにした。


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