妄想科学研究所【短編】
「い~い?他にもいっぱいあるわ!

スーパーの濡れたリノリウムの床じゃあローラーにトラクションがかかったりかからなかったりで、うまく動けないの!

その上ブレーキもきかなかったりするの!つつーって滑って!」

華がヒートアップしてきた(マズイ…)ドクターは密かに華とヒロシの位置を確認した。

「オマケに足首が固定だからしゃがめないし背伸びもできない!」

来るべき危険に備え、わずかに移動するドクター。ヒロシは華をなだめるつもりなのか両手で押さえる様な仕草で腰を浮かせかける。

「まあまあ華さん落ち着いて。ちゃんと聞いて改善しますから…」

「触らないでよ!」

ドガァ!

ガッシャーン!

華は立ち上がりしなヒロシに後ろ回し蹴りを見舞った。

吹っ飛ばされガラスを割って庭に転がるヒロシ。

間一髪難を逃れたドクターは、慎重に間合いを保ってなだめる。

「それで?不具合はまだある?」

一度爆発する事で急に憑き物が落ちた様に落ち着いた華はそれでも首を縦に振った。

「帰りが一番最悪だったわ…」


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