妄想科学研究所【短編】
天気の話でもする様な何げなさで、華は午後の出来事を話し始めた。

「ちょっとそこら辺を走ってみたら、スッゴく良くなってたからデパートまで行ってみる事にしたの」

ドクターは絶句した。
(なんてチャレンジャーなんだウチの嫁は)

デパートまでは2㎞以上あり、途中国道もある。住宅街の道とはワケが違う。

「でもイキナリ国道を走るのは怖かったから裏道だけで行ったの。試作機よりもスピードが出て、風が気持ち良かったわ」

ついつい小さくガッツポーズが出るドクター。

「それがなんでこんな事になるんですか?」

ユラリと立ち上がるヒロシ。手の甲で口元ににじむ血を拭っている。

怒った口調ではなく、ただ不思議がっているだけだ。タフな男である。

「だからね…」

ダーク華、再来。

「スピードが出るのが最初の落とし穴だったのよ…」

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