妄想科学研究所【短編】

落とし穴

「スピードがなんで落とし穴に?自転車と同じように、スピードが出た方が安定するはずだ」

(今、華がキレたらターゲットは自分だ…)

背中に汗がにじむのを感じながらも、疑問を口にせずにはいられないドクター。

逆に華は、デキの悪い教え子に諭すような口調になってきた。

「いい?スピードが上がるでしょ、すると前からの風圧が強くなるでしょ、だから中腰になるじゃない」

ドクターとヒロシにとっては(何をいまさら)といった所の常識である。

突っ立っていたら重心が高すぎて危ない。最も安定するのは前傾した中腰姿勢のはずだ。

「あの状況を簡単に表現すると『強い向かい風の中での空気イス』って感じがピッタリくるのよ」

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