妄想科学研究所【短編】
二人の警察官は細部はともかく雰囲気はそっくりで、感情のブレーカーが落ちたままの華には見分けができなかった。

警察官Aが、華に目線を合わせる様にしゃがみこんで話かけてきた。

「先ほど通報が多数届いたんですが、国道を身一つで走っていたのはアナタですね?」

警察官Aは目元にも口調にも笑みをにじませている。
イヤな笑いではなく微笑みに近い。

(この人はイイ人だ…)
何となく声をだせず警察官Aへは、うなずく事で返答しながら華はボンヤリ思った。

「本当にアンタか?どうやったらアンタみたいな人が車なみに速く走れるんだ」

警察官Bの口調は荒いが怒っているのではなく、むしろ怯えている様だ」

(この人も悪い人じゃなさそうだわ)
ゆっくりローラーダッシュを指差しながら思う。

それではむしろ都合が悪いのだ。
(腹を立てても暴れる訳にはいかないじゃない)

< 29 / 85 >

この作品をシェア

pagetop