妄想科学研究所【短編】
コンコンコン…

絶妙なタイミングで華がノックしながら入って来た。

「何を大声を出しているの~?」

セリフとは裏腹に目の輝きが危うい。実は少し前から聞いていたようだ。

「いや~議論が白熱しちゃってね!」

すかさずアイコンタクトを交わし意見を摺り合わせる。

「そうなんですよ~。僕、歩かせるのがこんなに大変だなんて全然知らなくって~!」

「あら、そう言う困難をなんとかするのが真のマッドサイエンティストでしょ?」

お互いに知られていると分かっていながら、白々しい会話が続く。

「この世に越えられない山はないのよ?頑張って人には出来ない事が出来るマシンを作り上げてちょうだい」

そのセリフを聞いてドクターがフリーズした。

しばらく固まった後ゆるゆる弛緩し、突然華に指を突きつけて叫んだ。

「それだぁぁ!!」
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