妄想科学研究所【短編】
華と同い年で普段から仲のいいお向かいの柴田さんは、振り返って華の顔を見るなり怪訝な表情を浮かべた。

「そっちこそどうしたの?そんな得意げな顔しちゃって。何かいい事でもあったの?」

自身の演技力に完全に酔っていた華は我に帰って、慌てて顔の前で手をパタパタ振ってみせた。

「いやいやいやいや何でもないわよ、いやホント!」

誰が見ても「何でもない」訳がなかったが柴田さんは追求しなかった。

それよりも、たった今仕入れた噂ばなしを披露したくてたまらなかったからだ。
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