偽りの世界で僕達は。
 
 友達なし、親友なし、恋人なしの十七歳。
 小学校の成績表によく書かれたコメントといえば<意志は強いが中々思ったことが口に出せず内向的>だった。
 自分で言うのもなんだけれど、別に内向的だったわけではない。小学4年生の時に兄を亡くしてから『笑う』ということを忘れてしまっただけ。今ではどこの筋肉に力を入れれば、笑うことができるのかさえわからない。もう、随分と笑っていない気がする。
 誰かを深く想ったり想われたり、そんな世界が苦手だった。だから一方的に壁を作って、一歩距離を置く。客観的に世界を見るからこそ、丁度いいのだ。誰かのことで苦しんだり、悩んだり、泣いたり。そして、……死んだり。自分や他人の感情に振り回されてばかりで、なんで人は適当に生きられないのだろう。そんな世界に踏み込むから、そんな世界に溺れてしまったから兄は死んだのだ。人の為と書いて「偽り」と読む。感情なんてその時のもので、結局は偽り。コミュニケーションをとるから、感情に振り回される。そんな人をきっと「馬鹿」と呼ぶのだと思う。
 


 言葉なんて、なくなってしまえばいいのに、それが希(こころ)の口癖だった。
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