衆道剣風録~契りの剣 二 血闘!百済廃寺
 静音が前に少し踏み込んだ!

 貰った!作兵衛の足が大きく踏み込み肩がもの凄い速さで回転した。雁金に大刀が振り下ろされる。
 静音の身体がその瞬間後ろに撥ね飛んだ!右手を柄から離した!
 何!作兵衛は違和感を感じた。だが、振り下ろされた剣はその慣性で止めることは出来ない。

 静音の右手首を切り落とすはずの作兵衛の剣先は、空を切り静音の足下に落ちた!そして静音は手の平を上にして剣の柄(つか)を握った。そして引き抜いた!

 作兵衛の振り下ろされた剣は今度は左肩の上に引き上げられる!
 静音の抜き方は本来の方法と逆であった。
 抜いて左肩の上に上げるが、柄の持ち方は逆である。だが上に上げられた剣の柄を待っていたのは左手だった!左手で順に持つ!そして右手が離され、順の持ち方に変えられる!

 香取神道流にある逆(さか)抜きの太刀!

 全ての武道流派の源流といえる神道流のこの技は、幼い時新右衛門が教えてくれた。まだ非力の静音と修理には、敵の目を眩ませて勝ちを取る方法だった。

 だが、一度見せれば二度と通じないと念を押された。

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