銀のしずくふるふる 金のしずくふるふる
俺はおもわずげんなりする。

最近のテレビのせいか、なんでもかんでも、霊に結びつけるのが流行ってるみたいだ。

去年くらいから、‘ここらへん’の噂をきいて、西の大きな都市や東京から取材にくる雑誌なんかがぐっと増えた。

それまでも、数年に一度くらいの割合でそういうのはあったらしいけれど。

でも、だいたい、取材の連中は失望して帰ることになる。

‘ここらへん’は霊能者の集まる隠れ里なんかじゃないからだ。

「違うって。前も話したじゃん。霊とか、そういうのじゃないって」

せっかくイナウをうまく投げられたのに舞の反応がいまひとつで、俺は、たぶん、すねている。

「だよね。話てくれたもんね。民族の儀式には他の二つの世界の気が入ってくるから、普通には説明できないことが起こるって。あれだよね」

舞は、一人で、うん、うん、うなずいている。

俺はちょっと言い過ぎたかな、と反省する。

昨日のオプニカは、舞にとってかなり刺激的だったはずだし、佐藤の流血なんて事件もあったし、舞が、いままでの俺の話から離れて、霊、なんかにいったりするのも、まあ、わかる。

「佐藤の耳が切れたのだって、たいしたことじゃなかったし。霊とか、そういう不気味なことじゃないからさ。ずっと続いてきた・・・」

「民族の伝統だもんね」

「そ、そう」

ぱっと勢いよく顔を、俺にむけて、にっこり笑った舞の顔が、西日に照らされて、ピリカにみえた。

ピリカ。ピリカ。

悲しい恋の話。
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