『natural source』(naturally番外編)
「伺っていた品物は以上です。万が一お身体に不調が出るようなことがありましたら、このアンジュまで」


礼を言って頷くベテラン執事さんに一礼を返しながら部屋を後にする。
十五の時から先生に付き、一人前の薬師として働きはじめて約二年。
王家専属の薬師だった先生の代わりとして、今では弱冠二十歳ながらにして、王家専属の薬師を勤めている。

王家専属。

なんて言ったら仰々しいけど、ここにいる人たちは、こちらが拍子抜けするくらい気さく。

そこらへんの下手な貴族の方が無駄にプライドばっかり高くて扱いにくい。


「いつもありがとう」


廊下ですれ違ったシェナ様が頭を会釈し、わたしに声をかけてくださる。

現在の王の弟君夫人。

昔は他国の姫付きの親衛隊をやっていたなんて噂を聞いたけど……微塵も感じられない。

今はフルム国の王をされてる長男のシューゴ様も物腰の柔らかい方だったし、長女のシュリ様も年上のわたしが憧れるくらい美人だけど気取ってない。

働くにはこの上なく素晴らしい環境だなぁ、って改めてわたしは感じていた。


数秒前までは……。


「ご苦労だな~麻薬師」

「…………」



やたらニタニタした笑顔を貼り付けた男がわたしに声をかけてきた。
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