『natural source』(naturally番外編)
「通りかかっただけだ。それよりランシェ」

「なんだよ」

「素直な奴だな。おまえは」


豪快な笑いと共に意味深なセリフを残しながらリューシュ様はこの場を去っていく。



「素直……?」



これも嫌味なのかしら?



「そうそう。俺は素直。おまえがニブいんだよっ。薬飲んで治してこいっ麻薬師」


意味のわからない皮肉を吐いて去っていく背中に、わたしの頭の中は疑問符だらけ。

ただ一つわかったことと言えば、ニブい奴呼ばわりされたこと。


「失礼な人……」





数日後。
わたしはいつものように薬を届けに城へ足を運ぶ。


ついでに新しい注文を取って帰ってね~。



っていうのは、先生からの見送りの言葉。

今日はマーセル国各地から貴族が集まる日らしく、王家専属の薬師ってだけで注文をしてくる見栄っ張りな貴族も多い。

そう言ったチェックは抜かりない……。
さすが先生……。

おかげでさっきからやたら人とすれ違って、頭ばっかり下げてる。

条件反射のように頭を下げていたわたしも、思わずここで動きが止まった。


「鬱陶しい面ばっかり見ると思ったら次は湿気た面かよ」



鬱陶しい面ってのは城を訪れてる貴族たちとして、湿気た面ってのはもしかしなくてもわたしだ。
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