『natural source』(naturally番外編)
「何言ってっ! ……もういいっ。もう、バカバカしいっ」


こう言ってわたしはランシェ様に背を向ける。

もう、頭の中ぐちゃぐちゃでわかんない……。



「ホントに……バカバカしすぎる……」

「俺に背中向けんな。ブサイクな泣き顔もちゃんと見て笑ってやるぜ?」



なんで泣いてる人間に対してこんなこと言えるんだろ……。


ホント、素直じゃないな。この人。



「いらないわよっ! どうして素直に慰めたり出来ないの……」

「したらこの前突き飛ばして逃げたくせに。ヒドい女だな」



あぁ……。
あれって慰めてたんだ……。

わかりにくいっていうか……逆にストレート過ぎ?



「だって! いきなりキスしたりするからでしょっ!」

「好きだから、すぐ泣き止ませたくてキスしたっ。 悪いかっ?」

「……誰が誰を好きなの?」

「俺が……アンジュを」


わたしの名前……。
初めて呼んだ……。


いつもの余裕綽々な態度が嘘みたいに、目をそらして、眉をひそめて、頬を赤らめて……わたしに好きって言ってる姿が……愛おしいかも。


「もぉ、いいやっ」


そう思ったら、急に気持ちが軽くなって、復讐なんてバカらしいって思えてくるから不思議だ。

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