『natural source』(naturally番外編)
こういう時は大抵、俺への用事だ。
視線の重なったユウセイが軽く頷いたのを見て、俺が退室の言葉を口にするより早く、
「……いってらっしゃい。ショウ」
こう言って微笑む彼女の瞳が、ほんの一瞬だけ寂しげに曇る。
この人はたまにこういう顔で俺を見る。
いつもは澄まし顔だったり飄々としてるのに……。
彼女の気持ちなどわかるはずもなく。
俺はその疑問に蓋をし、儀礼的に一礼してユウセイと連れ立って部屋を後にした。
「またやらかしたんだってな~。シュリお嬢様」
部屋を出るなり、並んで廊下を歩いていたユウセイがこう言って、にんまりと嫌な笑みを浮かべている。
「貴族連中を水浸しにしたんだろっ? クククッ。相変わらず綺麗な顔に似合わずじゃじゃ馬だな、あの方は」
「他人事だな。おまえ」
「当たり前だ。彼女はおまえのお姫様だろ? 全く良いコンビだよ」
誰が言い始めたのか。
いつも涼しげな澄まし顔の彼女と、いつも無表情の俺は感情の読めない似た者コンビらしい。
……どうせ言い出したのは隣のコイツだろうが。
そんな他愛ない会話で緩んでいた俺たちの空気は、目的の部屋のドアを前にピリッと引き締まる。
ユウセイに誘われてやって来たのは、俺たちの指揮官である騎士団長の部屋の前。
「失礼いたします」
「来たかショウ。ユウセイご苦労だったな」
ノックと共に部屋に現れた俺たちに、こう言って騎士団長はユウセイだけを部屋から下がらせた。
城内の騎士たちのまとめ役であり、現場の指揮官である団長。
マーセル国の治安保持を司られているお嬢様の父親、リューシュ様の信頼も厚い。
そんな団長が俺一人を呼び出す理由は一つしかなかった。
「近々、どこぞの国の鼠が忍び込むぞ」
マーセルは平和な国だ。
反面、影から平和を脅かす者もいるのが現実なのだ。
視線の重なったユウセイが軽く頷いたのを見て、俺が退室の言葉を口にするより早く、
「……いってらっしゃい。ショウ」
こう言って微笑む彼女の瞳が、ほんの一瞬だけ寂しげに曇る。
この人はたまにこういう顔で俺を見る。
いつもは澄まし顔だったり飄々としてるのに……。
彼女の気持ちなどわかるはずもなく。
俺はその疑問に蓋をし、儀礼的に一礼してユウセイと連れ立って部屋を後にした。
「またやらかしたんだってな~。シュリお嬢様」
部屋を出るなり、並んで廊下を歩いていたユウセイがこう言って、にんまりと嫌な笑みを浮かべている。
「貴族連中を水浸しにしたんだろっ? クククッ。相変わらず綺麗な顔に似合わずじゃじゃ馬だな、あの方は」
「他人事だな。おまえ」
「当たり前だ。彼女はおまえのお姫様だろ? 全く良いコンビだよ」
誰が言い始めたのか。
いつも涼しげな澄まし顔の彼女と、いつも無表情の俺は感情の読めない似た者コンビらしい。
……どうせ言い出したのは隣のコイツだろうが。
そんな他愛ない会話で緩んでいた俺たちの空気は、目的の部屋のドアを前にピリッと引き締まる。
ユウセイに誘われてやって来たのは、俺たちの指揮官である騎士団長の部屋の前。
「失礼いたします」
「来たかショウ。ユウセイご苦労だったな」
ノックと共に部屋に現れた俺たちに、こう言って騎士団長はユウセイだけを部屋から下がらせた。
城内の騎士たちのまとめ役であり、現場の指揮官である団長。
マーセル国の治安保持を司られているお嬢様の父親、リューシュ様の信頼も厚い。
そんな団長が俺一人を呼び出す理由は一つしかなかった。
「近々、どこぞの国の鼠が忍び込むぞ」
マーセルは平和な国だ。
反面、影から平和を脅かす者もいるのが現実なのだ。