『natural source』(naturally番外編)
普段はマーセル国生誕と同日に生まれ、神聖な護り神の加護があるというお嬢様の近衛騎士が俺の仕事。

しかし、俺の本業はその鼠が入り込まないうちに駆除してしまうこと。


暗殺者の抹殺だ。



「……目的は?」

「王の側近。重臣を排除して内側からマーセル国を潰そうってパターンだな」



王や側近が狙われるのは言わば定番中の定番。
密偵からの報告通り現れた殺し屋を、真夜中の門前で待ちかまえて一度は警告してみる。


「ここで引き下がれば命は助けよう」


しかし、暗殺に来た人間は言わば捨て身で任務にあたっている。
こんなので引き下がる奴は滅多に居ない。

ヤケになってて斬りかかってくる奴に、逆に取り引きを持ちかけてくる奴。
パターンは色々あるが、結末は同じだ。


俺に消される。



この仕事を始めて十年経つが、未だに任務を遂行した日は眠れない。


「おはよう、ショウ」

「おはようございます」


いつもと変わらない表情でいつもと変わらない表情のお嬢様に挨拶を返す。
彼女は相変わらず涼しげな澄まし顔をしていた。


「……眠れなかった?」

「はっ……?」



俺の本業は秘密裏の任務。
騎士団や王家の人間でもごく一部の人間しか知らない。
勿論この人がそれを知る筈がない。


なのにこの人は……任務を遂行した次の日には、何もかも見透かしたような瞳で決まってこう聞いてくる。


偶然とは言え、そのたびに一瞬ヒヤッとさせられる。


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