『natural source』(naturally番外編)
「意外と繊細なんだから」


こう言ってクスクスっと笑い、


「じゃあ、ちゃんと眠れるようにショウの家の神寺に祈っとくわ……今日もバカな貴族が水浸しになりますように」



俺の実家である神寺がある方角に向かって両手を組む……が、言ってることとやってることがムチャクチャだ。



この人は……何がしたいんだ?


長い付き合いだが、俺は未だにこの人の言動に惑わされることがあった。



「水は禁止です。ご自分で片付けさせますよ」

「じゃあ……ショウがずっと傍で見張ってればしないけど?」

「はっ?」

「朝から夜中までずっと……」


こう言って彼女は窺うような視線で俺を見つめてくる。


「…………」

「…………」


彼女が俺にどんな答えを待っているのかわからない。
切れ長の瞳が俺を捉えて離さず、そのままただ無言で見つめ合う。


俺たちの間にはなんとも言い難い不思議な空気が流れていた。


「……ホント無表情よね。ショウって」

「お互い様です」

「そうかもしれないわね」


俺の言葉に小さく笑い視線を外す。
結局、俺ははぐらかされたらしい。


……ホントにつかみ所のない人だ。


「どちらへ?」


そのまま何も言わずに部屋を出ようとする彼女の背中に声をかける。


「洗濯場」

「……粉石鹸もダメです」

「…………」

「あっ……」


俺の忠告を聞くわけもなく、彼女は小走りで部屋を飛び出して行ってしまった。

あんなに大人びた表情で俺を見つめたかと思えば、今度は子どものような悪戯をしようとする……。


ホントに何を考えてるのか全くわからない人だ……。


仕方なく俺はゆっくり彼女の後を追うことにした。
それがお嬢様の近衛騎士である今の俺の仕事だから。

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